奈義町
岡山県の北東部、中国山地の秀峰「那岐山」の南麓に広がる奈義町は、四季折々の美しい自然に恵まれた人口6000人の町です。全国で市町村合併が進みましたが、奈義町は平成14年に「合併しない」ことを住民投票により選択しました。
また平成24年度には、子どもたちが夢と希望を持ち、健やかに育てる環境づくりを目指して「子育て応援宣言」を行いました。その結果、平成26年には合計特殊出生率2.81を達成することができました。
奈義町の魅力である「自然とアート」を軸に、誰もが笑顔で活力をもって暮らせるまちづくりを進めています。
奈義町現代美術館(NagiMOCA)
世界的に有名な建築家・磯崎新氏のプロデュースにより建てられた、作品と建物が半永久的に一体化した現代美術館「奈義町現代美術館(NagiMOCA)。鑑賞者が作品の中に入って作品を「体験」する、体験型美術館の先駆けです。美術館の背後に広がる秀峰・那岐山を借景に、奈義町の自然と調和する形で建てられているのも特徴的です。
施設内にはギャラリースペースも有しており、そこでは年間約10本の企画展を開催し、県内・県外問わず、様々なアーティストの表現の紹介をしています。企画展期間中はアーティストによる鑑賞者参加型のトークイベントやワークショップなどを開催しています。また、音楽イベントや観月会、コンテンポラリーダンスのイベントなど、枠に捉われない様々なアート表現を紹介し、美しい自然と館の特徴的な魅力を活かしながら、鑑賞者に身近にアートを楽しんでもらえるような内容を展開しています。

横仙歌舞伎
奈義町で江戸時代から受け継がれてきた伝統芸能「横仙歌舞伎」は県重要無形民俗文化財に指定されています。横仙歌舞伎の芸の保存者、同好者からなる横仙歌舞伎保存会は、昭和41年に設立され、会員約70名、現在も活発に保存伝承に力を注いでいます。演目も20題以上あり、岡山県内で唯一自ら衣裳、かつらを保有する団体として県内の他の保存団体への裏方支援など、岡山県の地下歌舞伎伝承にも貢献しています。
事務全般、子ども歌舞伎の育成指導、公演時における太夫、三味線、裏方等、保存伝承の中心的役割を担っています。加えて、小学校3年生の総合学習の授業で、「歌舞伎教室」の講師を務め、子ども達が郷土の歴史・文化への理解を深め、郷土愛を育む活動にも取り組んでいます。

横仙歌舞伎 小学校授業
奈義の子ども達が郷土の歴史と文化・芸術への理解を深め、郷土愛を育み、加えて演じることでの表現力・コミュニケーション能力・多様性・理解力を育む教育の一環として、毎年小学3年生の総合学習(2コマ×10日)において、『白波五人男』を稽古し、授業最終日は参観日にして、全ての児童が役を演じ、保護者に披露しています。

平田オリザ氏によるコミュニケーション教育
奈義町の小学校と中学校は一つずつであり、子どもたちは同じ仲間達と育っていきます。他者を尊重し、自分の意見を持ち、伝えながら、協働する力を身に付けるため、小学4年生と6年生、中学1年生に対して、演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の授業を行っています。合わせて小中学校教諭を対象に、コミュニケーション教育の重要性や指導のポイントなどについての理解を深める研修も実施しています。
平成28年度には、世界初のロボットを使ったコミュニケーション教育を行い、子どもたちは、ロボットと触れ合いながら、コミュニケーションの本質を学びました。

地域包括ケア × アート
奈義町では、「臓器から地域まで診る」地域医療や、生きがいを持つ“人間的健康”を大切にする保健行政をベースに、多職種が密接に連携して、早くから充実した地域包括ケアを提供しています。
また、世界に誇る現代美術館や江戸時代から受け継がれてきた横仙歌舞伎など、アートを大切にしてきたこの町には、子どもからお年寄りまで主体的に地域づくりに参加する風土があります。
この「アート」と「暮らし」の不思議な関係を活かして、介護サービス等の利用を好まない高齢男性特有の課題に取り組む「ちょいワルじいさんプロジェクト」や、障がいのある人もない人も自分らしく過ごせる居場所「みんなのおうち ぽっかぽか」など、地域の様々な課題をアートの力で解決していく取り組みを行っています。赤ちゃんからお年寄りまで誰もが、アートの力によって新たな価値を生み出し、全ての人が地域の中で自分らしく輝くことができる「暮らし」を実現したいと考えています。
